Angra - Aurora Consurgens
こんばんは。
今回は一週間ぶり3度目の登場、
です。
聴くのは前回レビューした「Freedom Call」から10年後に発表した6作目のスタジオアルバム「Aurora Consurgens」。アルバムタイトルは中世ヨーロッパの哲学者・神学者であるThomas Aquinasによる書物からとられたらしい。深層心理の研究などで知られるCarl Jungが参考にしたらしく、スピリチュアルなテーマという点でも、このバンドらしいチョイスですね。
トラックリスト
#1 The Course Of Nature
#2 The Voice Commanding You
#3 Ego Painted Grey
#4 Breaking Ties
#5 Salvation: Suicide
#6 Window To Nowhere
#7 So Near So Far
#8 Passing By
#9 Scream Your Heart Out
#10 Abandoned Fate
#11 Out Of This World
何かファンタジックな映画でも始まりそうな#1のイントロ。まさに中世のスピリチュアルな印象で掴みはバッチリ。そのままメタルサウンドに突入するわけですが、これまで以上にヘヴィな音作りになっていることに注目したい。イントロこそトライバリティックな雰囲気を醸し出していますが、ギターリフが入ってきた途端に王道パワーメタルが炸裂しており、#2、#5もそのパワーメタル全開な流れのままにKiko Loureiroの細かなピッキングが光るイントロと、ツーバスがドシドシ蹴られるスピードチューン。過去作と比較するとキーボードプレイによる荘厳で派手な雰囲気は薄れていますが、優良な王道パワーメタルを聴くことができます。
キーボードの派手さが影を潜めた分なのか、もともとテクニカルだったギターの速弾きがより強調されている。ギターソロはもちろんのこと、ヴォーカルのバックでもザクザク刻んたプレイは聴きどころ。どの曲でもバチバチですが、#9は特にド派手でエキサイティング。この作品を象徴するようなザクザクしたヘヴィさと緻密なテクニカルさを兼ね備えた注目のナンバーです。また、#4などではクリーン/アコースティックトーンでの印象的なアルペジオも登場、壮大さが売りのイメージだったこのバンドですが、これまた違った雰囲気も見せてくれます。
逆に過去作に負けずも劣らない民族的な雰囲気を持っているナンバーもあり、#7ではブズーキという琵琶に似た弦楽器が使用されています。そして演奏はやはり(?)Kiko。テクニカルな速弾きから叙情的なソロまで弾きこなすだけでなく、ヘヴィなパワーメタルからトライバリティックな演奏までカバーするとは。ちなみにオーケストレーションの約半分もKikoが担当。ジャズ/フュージョンのジャンルでも活躍している彼ですが、今作品では彼の器用さが大活躍しています。
Andre Matosは3作目「Fireworks」発表後に脱退しており、ヴォーカルはEdu Falaschiに交代。高音でパワーが炸裂していたAndreとは対照的、とまでは言いませんが、中音域をこぶしを効かせた力強さに魅力のあるタイプ。#4のような落ち着いたパートではセクシーな歌声を披露してくれ、パワーだけじゃないシンガーとしての幅広さを聴かせてくれます。
Eduと同じタイミングでベーシストとドラマーも交代しており、前者はFelipe Andreoli、後者はAquiles Priester。Felipeはオーディションで加入し、このアルバムの発表の翌年にはEduとともにAlmahを結成しています。AquilesはAngraと同じくブラジルのパワー/プログレッシヴメタルバンドHangarからスカウトされた実力者。この作品はパワーメタル色が強く、そうなると堅固なリズム隊がカギになるわけですが、その点はこの二人によって完全に支えられているといっていいでしょう。特にバスドラムの手数はセカンドアルバム「Holy Land」から倍増くらいはしているのではなかろうか。
プロデューサーにはViper~Angraの今作までエグゼクティブのAntonio D. Piraniに加え、ShamanやNoturnallのヴォーカルで知られるThiago Bianchiと、Pink Cream 69やUnisonicのオリジナルベーシストで知られるDennis Ward。(Dennisはサウンド面のエンジニアも担当。)パワーメタル色の強さが最大限に引き出された背景にはこのメンツの働きも大きいでしょう。
歌詞は内省的な場所に救いを求めるようなテーマになっているようで、冒頭に書いた書物の内容に基づいたものでしょう。Rafael Bittencourtは結構な読書家であるらしく、彼の知的な面もここで存分に発揮されています。
#11はボーナスですが、なんとRafaelがリードヴォーカルをとったナンバー。もともとヴォーカル志望だったということもあってか、なかなかにイイ歌声を披露してくれます。(かなりリバーブをかけてOKをもらったという話もありますが…)曲調はセカンドを思わせる壮大さと民族的アプローチを感じるもの。中心人物であるRafaelのワガママがボーナスという形で実現された、みたいな感じですかね。色々な意味でナイスなナンバーです。
6作目ともなれば変化や進化が求められるキャリアになってくるわけですが、これまでのバンドの雰囲気を残しつつも、それにしっかりと応えた聴きごたえのある完成度の高い作品。特にKikoが炸裂しているので、派手なギターが好みの方はかなり楽しめるはず。バンドの過去作と比較して聴くのもいいと思います。
先日からにほんブログ村に参加していますが、CDレビューカテゴリの注目記事で前回の記事「Dream Theater - Falling Into Infinity」が一位を獲得しました。やったー!
まあそんなに大規模な世界でもないんでしょうが、一位という響きはやっぱり嬉しいですね。いつもありがとうございます。コメントが来るようになったらもっと嬉しいなあ~。
今後ともよろしくお願いします。
おわり