清春 - poetry
こんばんは。
です。
黒夢、SADSでの活動で知られ、V系の特徴的なヴォーカルスタイルに大きな影響を与えた人物としても著名ですね。1990年代の日本のロックを語る上で欠かせない存在で、若いファンも少なくないカリスマ的存在。
聴くのは黒夢、SADS共に活動を停止したのちの、ソロ活動開始後の初のスタジオアルバム「poetry」。ちなみに久々のリクエストをいただいてのレビューになります。国内アーティストもDOUBLE DEALERの「DERIDE ON THE TOP」以来1か月ぶりと久々です。
トラックリスト
#1 唯一遠くへ
#2 暗いくちづけ
#3 闇
#4 2月
#5 MELANCHOLY
#6 オーロラ -Album ver-
#7 退廃ギャラリー
#8 EMILY -Album ver-
#9 あの詩を歌って
#10 PERFUME
#11 REVOLVER
#12 飛行船
清春といえば妖艶さでセクシーなヴォーカルスタイルが持ち味ですが、#1から炸裂。むしろバンド時代比較してもよりクセが強くなった印象です。ロックバンドのヴォーカルということもあり、ギターは強めに歪んでいるものの、大きく目立ってはおらずリバーブも強めにかけ、アコギとベースがより強調されたミックス。清春の艶やかな雰囲気に合ったメロウなナンバーです。
そのザラザラした歪みを保ちながら#2ではブルージーな雰囲気で展開しつつラストはパンキッシュにシャウトとキメたり、#5は独特のメロウな雰囲気はそのままに歌謡曲を思わせるメロディが取り入れられていたり、#7はジャジーなノリだったりと曲調はさまざま。それでいて時に妖艶に囁き、時にエモーショナルに叫ぶ清春のヴォーカルが乗ってくれば完全に彼の楽曲として成立してしまうのだからさすがです。
ギターを中心に展開しながらも前述のとおりギターがリードするわけではなく音色も様々で、メロトロンが使用されたり、ストリングスもキーボードではなく生の弦楽器が使用されたり、ドラムも曲によって音が全然違う。独特の雰囲気はどの曲にもあるのですが、曲によって色がかなり異なるのもそれが大きいでしょう。
曲で使う曲調や音色に合わせてプレイヤーもそれぞれ起用しており、ギタリストは自身を除いて6名、ベーシストは5名、ドラマーは5名とこだわりもすごい。多くの「仲間」も含まれており#1ではken(ギター)、#2ではMORRIE(ギター)、#5ではSUGIZO(バイオリン)、#11では森重樹一(コーラス)がそれぞれ参加、豪華な演奏を聴くことができます。#11はファンキーなナンバーですが、森重が清春に負けじとかぶせてくるんだけど、決して邪魔するわけじゃなくいい味出してる。二人が一本のスタンドマイクに寄って歌う姿が目に浮かびます。
どの音も変に引っ込んだり目立ったりすることなくまとまっていながらも、各パートの音はしっかり掴むことができ、それぞれの良さが分かるようになっていて(これはもちろんエンジニアの手によるものではあるのでしょうが)、かなり個人的に好みの仕上がり。全体的にインディーでヴィンテージなサウンドなのもイイ。アコギや特徴的なパーカッションもそうですが、どこか寂しげな印象はこの辺の音の選び方によるものでしょう。
ヴォーカルスタイルはもちろんのこと、メロウな曲調、ジャケットの雰囲気や歌詞のイメージまでどれをとってもセクシーだけどどこか寂しげな世界観で統一されており、隅から隅まで清春のこだわりが詰まった作品。バンドからのソロ作品は時にファンを落胆させてしまいますが、この作品はどのナンバーでも清春を十分に楽しめるモノになっています。ファンの方は必聴です。
2016年にX JAPANの主催で開催されたVISUAL JAPAN SUMMITで清春観たんですが、とにかくセクシーだったのを覚えてる。セトリは「poetry」からの選曲はなかったのですが、聴きたかったなあ~。はやくライヴに行きたい。LOUD PARKの告知はまだかな。
おわり
Of Machines - As If Everything Was Held In Place
こんばんは。
今回はアメリカン・ポストハードコア、
Of Machines
です。
2006年にジョージア州アトランタにて6人編成という大所帯で結成したバンド。2010年に活動停止、2013年に再開したようですが現在は解散してしまっているようです。聴くのは彼らの唯一のスタジオアルバム「As If Everything Was Held In Place」。アメリカン・ポストハードコアは昨年末のAmystの「Seeker」以来半年ぶりと久しい。メタルが連続じゃないのも久しぶり。
トラックリスト
#1 Introduction
#2 Things Too Visible To See
#3 It Must Belong Somewhere
#4 Reset, Reflect
#5 Sailing Alone Around The Room
#6 As If Everything Was Held In Place
#7 Becoming Closer To Closure
#8 Lost In Translation
#9 I Write This In The Hopes Of...
#10 Weaving The Values That Sustain Us
#11 An Autobiography In Vivid Color Pt. 1
#1はゲーム音楽を思わせるエレクトロニカなSEで、2000年代後半のニュースクールな雰囲気。そしてそのまま#2へ入るわけですが、結構がっつりなバスドラムのアタックと、しっかり歪んでヘヴィなギターリフがなかなかカッコイイ。やっぱ経歴みてナメてかかっちゃいかんな、というかさすがアメリカン・ポストハードコアといったところか。
ヴォーカルはクリーンとシャウトと分担され二人体制。二人ともに咆哮といえるような全力の叫びを聴かせてくれ、特にクリーン担当のDylan Andersonの高音はシャウトといっても過言でないパワー。また、時折#1を思わせる機械的なサウンドはシャウト担当のBennett Freemanによるもの。派手さをシンセに頼るわけでなくワンポイントで入れてくるあたりも評価したい。
そして個人的に注目したいのは、少々リバーブが強めな伸びやかなギター。トレモロでより浮遊感を強調したフレーズも多く使用され、バッキングに華やかな印象を与えます。かと思えばヘヴィなフレーズが飛び込んできたり、グッと切り替えしてくるあたりもイイ。
#5は全体的にどのパートもリバーブ強めのメロウなバラードナンバー。このバンドのギターの魅力が最大限、かつDylanのパワーやドラムのアタックもしっかり聴けるナンバーです。その後のタイトル曲でもそれらの魅力を発揮、特に浮遊感の強いギターサウンドを聴かせてくれながら、そこにブレイクダウンが導入され、メタルコア寄りな雰囲気に興奮してしまったな。クールなヴォーカルパートもあったりとやはりタイトル曲ということで気合い入ってる。
プロダクションとサウンドエンジニアはCameron Mizellという、The Word AliveやA Skylit Drive、Woe, Is Meなど00~10を盛り上げてくれたニュースクール・ハードコア勢御用達の人物。もちろんバンド自身のレベルの高さもあるだろうが、バンドの強みを生かしつつ、ここまでキレイなサウンドに仕上がったのも彼の力も十分にありそう。
もうちょいヘヴィでベースが抜けてきてもいいかなと思いつつ、曲の完成度は決して低くない。全体的にメランコリックでメロウな雰囲気で統一され、作品の世界観やバンドのサウンドを知ることができる良作と思います。評論家からの評価も概ね良いようなので、ポストハードコア好きな方なら普通に楽しめる作品だと思います。
昨日久しぶりに居酒屋に出向きました。初めてお会いするTwitterのフォロワーさんと飲んだんですが、やはり居酒屋での雑談楽しいな~。コロナも落ち着いてきたしもっとバカの居酒屋やりたい。
おわり
Animal Collective - Strawberry Jam
こんにちは。
今回はアメリカからエクスペリメンタルポップ、
です。
1990年代半ばにアメリカ・ボルチモアにて結成、フォークやサイケ、ノイズやエレクトロニカなど、実験的に多彩なジャンルから要素を取り入れつつポップに仕上げた独創的な音楽性でエクスペリメンタルシーンを先導するバンドですね。各メンバーがそれぞれ積極的にソロ活動も行っているかと思えば、時にはバンドの作品にクレジットされないメンバーがいるなど自由度の高い活動も特徴的です。
聴くのは7作目のスタジオアルバム「Strawberry Jam」。非メタル作品久しぶりだな。キューティなタイトルとは対照的に生々しいジャケットが印象的です。
トラックリスト
#1 Peacebone
#2 Unsolved Mysteries
#3 Chores
#4 For Reverend Green
#5 Fireworks
#6 #1
#7 Winter Wonder Land
#8 Cuckoo Cuckoo
#9 Derek
ひとまず#1は小刻みなシンセとベースが不規則に交錯するエクスペリメンタルなイントロ。この前衛感久しぶり…と回顧していたら四つ打ちのキックが入ってきてポップの様相を見せ始めます。素朴なヴォーカルで曲は進行しますが、時にシャウトが飛び込んできたり、そもそもイントロの前衛的なフレーズは曲を通して流れ続けており、常にポップとギリギリでせめぎ合う、ドキドキハラハラするナンバー。コレが先行シングルなのだからかなり攻めてる。
全体的にサウンドは常に不安定な浮遊感を有し、シンセはノイズを孕み、ヴォーカルは掴みどころがない。要素をひとつひとつ取り出してみるとエクスペリメンタルそのものなのに、なぜかそれらは彼らの手によって調理された結果、狂気的なポップへと変貌を遂げるようだ。低音が弱く宙に浮いている感じが強かったり、時に暴力的な激しさを見せたりと、聴き手を変に落ち着かせてくれないコワさがある。
この作品に関してはメンバー四人がクレジットされているのですが、全員が「Performance」という役割での表記なのもまた面白い。一応担当楽器みたいなものはあるようですが、おそらく明確に線引きして制作しているわけではなく、自分たちのアイデアをあらゆる手段で楽曲に盛り込むような形で制作を進めているのでしょう。セルフプロデュースということもあり、とにかく自由度の高さが作品そのものを表しているといえます。
そもそもメンバーの名前もAvey Tare、Deakin、Geologist、Panda Bearとフリーダム。”動物集団”だけど動物は一匹しかいないし、地質学者までいる。一応本名は普通に公開しているようです。
タイトルの「Strawberry Jam」はバンドのライヴを行うためにギリシャへ向かっている途中の飛行機の中で、このバンドの創始者であるPanda BearことNoah Lennoxがパンに塗るためにイチゴジャムの袋を開けた時、その輝きに目を奪われたことからインスピレーションを受けて制作されたところからだそう。まあそんなこったろうとは思ったけど、アーティストが五感を通じて感じたことをサウンドとしてアウトプットする時、その可能性の大きさにはいつも驚かされる。それがエクスペリメンタルであればあるほどドキドキワクワクが大きくて、エキサイティングになれる。この作品も例に漏れず、楽しめる仕上がりになっています。
ギリギリで狂気的だけれどもなぜかポップさを感じてしまう不思議な作品。ただし聴きやすくはないので、迂闊に手を出すと唖然としてしまうかも。うまく開封できなくて”イチゴジャム”をぶちまけてしまった時のように。
アレですね、前衛的な作品はサウンドに感化されていつもより言い回しがウザくなってしまいますね。我ながら最後ドヤ顔ですよ。そんなことより私は生活が雑過ぎて玄関にぶちまけられているチラシ類を片付けたほうがいいので、片づけます。
おわり