Yes - Fragile
こんばんは。
今回はプログレッシヴロックの五大バンドの一角、
Yes
です。
プログレシッヴ、ひいてはロック史において語るに欠かせない存在で、結成から50年以上経ち、ジャンルの隆盛期から革新的な音楽性で界隈を牽引してきた最重要バンドのひとつ。メンバーの脱退・交代だけでなく分裂やらなにやら、長い間に多くの紆余曲折を経つつ、ここまでに21枚のスタジオアルバムを発表、ツアーもいまだにこなすアクティヴさも持つバンドの鑑です。
聴くのはそんあ偉大なバンドの偉大な名盤のひとつ、彼らの4作目「Fragile」。「こわれもの」という邦題でおなじみ、地球が描かれたジャケットは誰もが一度は目にしたことのあるはず。1970年代の作品はJethro Tullの「Aqualung」以来約3か月ぶり。畏れ多い。緊張してきたな。
トラックリスト
#1 Roundabout
#2 Cans And Brahms
#3 We Have Heaven
#4 South Side Of The Sky
#5 Fire Per Cent For Nothing
#6 Long Distance Runaround
#7 The Fish (Schindleria Praematurus)
#8 Mood For A Day
#9 Heart Of The Sunrise
#10 Amrica
#11 Roundabout [Early Rough Mix]
#1は日本人には今やおなじみ「ジョジョの奇妙な冒険」で使用された名曲。一時期はコラが大流行しましたね…。みんなが出展元をどれくらい認知しているかはさておき、イントロに据えられた寂しいながらもこれから何か起こりそうなSteve Howeのギター、そして全員のテクニックがこれでもかと発揮されたパートに突入する瞬間は何度聴いても鳥肌モノ。曲を引っ張るベースのフレーズは今後永遠に音楽史に残ることでしょう。
今作からRick Wakemanがキーボーディストとして加入し黄金ラインナップと呼ばれますが、#2はそんなWakemanの多重演奏によるブラームスの交響曲第4番ホ短調第3楽章、続く#3はヴォーカルJon Andersonによる多重録音作品と、バンドによるナンバーと、それぞれのメンバーのソロ小品とで構成されているのがこの作品の特徴のひとつ。#5は前任のマネージャーへのロイヤリティを払い続けなければいけないことへの皮肉を滑稽な音の絡みでスキッフルに表現したBill Bruford作曲によるインスト小品、#8はHoweによるフラメンコの要素を擁するソロ曲。その中でも面白いのが#6とメドレー形式になっている#7。各曲で基盤を支えるにとどまるだけでないプレイを魅せてくれるChris Squireのベース多重録音によるナンバーで、タイトルは彼が「長湯」という嘘の言い訳をして遅刻し、いつもメンバーを困らせていることから付けられた彼のあだ名だそう。各メンバーの技術を最大限に魅せてくれる構成になっています。
#4はバンド演奏によるナンバーで、ここではWakemanのピアノ演奏が大活躍。このジャンルはクラシック音楽の要素が多分に見られますが、中盤は特にその雰囲気が強く、ピアノ教師を目指していた時期もあるWakemanのソロは圧巻。逆に後半はロック色が強く、各パートが複雑い絡み合うYesらしいナンバー。
#9も多くタイアップに使用されている、#1に並ぶこのバンドの有名曲のひとつで、オリジナル盤では最長尺の10分超え。その中で16分で刻まれる楽器隊によるスリリングな雰囲気のメインフレーズと、幻想的で引き込まれるサウンドが演奏されるパートとのコントラストに心が引き込まれます。
そして忘れずに触れておきたいのが#1の歌詞に関する逸話。イエス・アルバム・ツアーが終盤に近づき、Andersonがロンドンへ帰路の途上で車の後部座席にいて周りの景色を眺めながら、自分の奥さんに会うのが待ちきれなかった時の心情を、描いたのが#1というのは有名。プログレというと難解な印象が強い(実際この曲も訳すのは大変らしい)ですが、なかなか可愛らしいテーマだなあ。かつ叙述的で詩的な表現も多く、この面でも一流のアーティストだ。
#10、#11はボーナストラックで、#10は「The New Age of Atlantic」というサンプラーアルバムに収録されたSimon & Garfunkelのカヴァー。Yes流の多分なプログレアレンジがなされながらも、原曲のフレーズが各所にうまく散りばめられた面白みのあるカヴァーです。
まあこのジャンルはそういうモノですが、やはり一回聴くだけでは魅力を感じきれないというのが正直なところ。「プログレッシヴ」とはよく言ったもので、「ロック」とついてはいるものの、ロックに留まることなく非常に多彩な要素が複雑に絡み合って曲、そして作品が出来上がっており、つまるところそれを一つ一つ紐解いていくとなるとそう簡単には問屋が卸さんわけですね。制作側もそのつもりのはず。
プログレッシヴロックというジャンルは全盛期が短いという評価が下されていますが、この作品こそ華やかな楽曲が多いものの、本質は大海の如く広く深いわけで、大衆が嗜むには荷が重すぎるのだから、馴染むわけがない。むしろうわべだけ商業的に消費されてしまうことなく、専門家や音楽好きの間で十分に分析・評価され、音楽として確立されているのだからコレでいいのだ。そしてそうなったのは他でもなく、このジャンルを形成してきたアーティスト達の功績でしょう。
まとめると少々私には手に余る大作でした。50年も前にこんな作品を作っていたことに感服です。どの時代に聴いても驚かされ、評価されるでしょう。ひとまず今回は作品を「感じる」ことができました。この先また知識を蓄えた上で聴きなおしてみたい。
何を理解するにも歴史を学ぶのが最も理解を深めるのに最適だと思うんですが、ロックの中ではプログレは特にそれが大事になるなあ、と思いました。ありがとうございました。
おわり
Suicidal Tendencies - The Art Of Rebellion
こんばんは。
今回はアメリカ西海岸からクロスオーバー・スラッシュの先駆者、
Suicidal Tendencies
です。
1980年代の初頭から徐々に音楽性を変化させつつ、クロスオーバーという形で東側のAgnostic Frontなどとともにパンク界へ変革をもたらしたバンドのひとつ。オリジナルメンバーはMike Muirだけになってしまっていますが、現在も活動中です。
聴くのは5作目のスタジオアルバム「The Art Of Rebellion」。クロスオーバー/ハードコアはAll Out War以来約一年ぶり、Agnostic Frontはもう一年半以上前のレビューだし、めちゃめちゃ久しいな。
トラックリスト
#1 Can't Stop
#2 Accept My Sacrifice
#3 Nobody Hears
#4 Tap Into The Power
#5 Monopoly On Sorrow
#6 We Call This Mutha Revenge
#7 I Wasn't Meant To Feel This / Asleep At The Wheel
#8 Gotta Kill Captain Stupid
#9 I'll Hate You Better
#10 Which Way To Free
#11 It's Going Down
#12 Where's The Truth
#1はクリーントーンのアルペジオとベースの優しい絡みで始まる穏やかなイントロで始まり、スラッシーなリフを擁するパンクナンバー。この時点でクロスオーバーな雰囲気全開。シンセがフィーチャしたり、メタリックなギターソロ、曲長6分半というのもオルタナティヴなアプローチが目立つ楽曲で、さすがクロスオーバーの先駆者。他の楽曲でもしばしば曲のオルタナティヴ要素を担うキーボードはJohn Websterという人物がアディショナル参加。AnnihilatorやMötley Crüeのアルバムへ参加経験のある実力者です。
ベースはみなさんご存知、現在Metallicaで活躍中のRobert Trujillo。ベースというパートはパンクやメタルではグルーヴ作りに徹するためにリフと同じ動きをするのが通常ですが、この作品のRobertはとにかくよく動く。支えるというよりも楽曲を彩る役割で、#10に至っては曲のリフを担当し引っ張っているくらい。曲によってゴリゴリしたもサウンドからハリのある引き締まった演奏までこなし、作品の方向性を決定づける柱として重要な要素を担っています。
そんな感じでそれぞれのパートが自由に演奏されているのが非常に特徴的。前述のAll Out Warは暴力的なグルーヴ感とヘヴィな一体感、Agnostic Frontはハードコアパンク譲りのスピード感が中核となる武器でしたが、こちらはグルーヴ感はうすめでオルタナティヴ志向が強く、音色も豊富(なんとチェロ奏者がクレジットされている)でプログレッシヴともいえる音楽性が魅力的です。もちろん#6や#8などでは前ノリな部分見せるなどやはりパンク魂は健在。
というのもこの作品は非常に「実験的」と評されており、当時のギタリストMike Clarkもそれを認めているよう。(ちなみにこのバンドとしては最長の作品らしい。)元からそのように計画されて制作されたわけではないそうですが、1990年代のオルタナティヴロックの流れにインスパイアされ身を任せてみた部分はあるのかも。実験的な方向に舵を切った作品というのは大抵の場合酷評されるのがオチですが、オルタナティヴながらも、ジャケットで燃えているモナ・リザやパンク譲りな攻撃な歌詞などパンクのルーツを残すこの作品は高い評価を受け(All Music ☆4)、発表年のUSビルボードでは52位に達し、新たなファン層の獲得にもつながりバンドの強さが伺えます。
プロデューサーはRushやQueenrÿcheの作品も担当したPeter Collinsという人物で、エンジニアはPaul Northfield(ミキシング)、Bob Ludwig(マスタリング)という二名が担当。エンジニアの二人も多くのメタルの名盤を担当した経験を持っており、手練れのサポートが作品を支えていたことがわかります。まあそうでなければまとまるもんでもないでしょうが…
タイトルの直訳「反逆の芸術」とはよく言ったもんで、「クロスオーバー」という言葉以上に既成のパンクの概念に反逆した多才なアプローチが見られる面白い作品。逆にパンク作品というよりはオルタナティヴ(ミクスチャー)ロックの作品と捉えたほうが分かりやすいかも。Robert Trujilloも大活躍しているので、Metallicaファンの方にも楽しめる作品と思います。
かなり久しいジャンルのレビューということで、自分の過去のレビューを見返したんですが、ひどく稚拙でげんなりしてしまったな。過去の記事へのアクセスのちょこちょこあるわけですが、恥ずかしいったらありゃしない。穴があったら飛び込んでそのまま天に召されたい。あと読みづらい。つらい。まあ多少は成長したということで。うん。
おわり
Evanescence - Fallen
こんにちは。
今回はアメリカのロックバンド、
です。
2003年のデビュー以降、三作のオリジナルアルバムを発表し、どれもチャートで好成績を残している売れっ子バンド。今年2020年に9年ぶりとなる完全オリジナルアルバムの新作を発表予定で、4/24には先行シングルを発表しました。日本でも話題に挙がることが多く、国外のバンドとしては割と知名度の高いバンドのひとつですね。
聴くのはデビューアルバムに位置づけられる「Fallen」。全世界で1500万枚という驚異の売上を記録し、バンドの人気を不動とすることとなった作品です。
トラックリスト
#1 Going Under
#2 Bring Me To Life
#3 Everybody's Fool
#4 My Immortal
#5 Haunted
#6 Tourniquet
#7 Imaginary
#8 Taking Over Me
#9 Hello
#10 My Last Breath
#11 Whisper
#12 My Immortal [Band Version]
#1はシングルカットの第一弾。がっしりとしたギターで支えられる叙情的なメロディと伸びのあるAmy Leeのヴォーカルとこのバンドの持ち味を存分に発揮したナンバー。AmyがMVで着ているドレスはAmy自身がデザインしたものだそう。ピアノのイントロが印象的な#2はこのアルバムの先行シングルで、このバンドの代表曲のひとつ。12 StonesのギターヴォーカルPaul McCoyがアディショナルヴォーカルとして参加しており、ツインヴォーカル体制になっています。
#9やシングルカットの#4はピアノとストリングス主導のバラード。Amyのしっとりしたヴォーカルが光ります。AmyがMeat Loafの弾き語りがきっかけでバンドに加入したのは有名な話ですが、この作品では演奏しておらず、鍵盤楽器とプログラミングはすべてキーボードのDavid Hodgesが担当。オーケストレーションにはLinkin ParkのMeteoraなど数多くの名盤への関わりを持つDavid Campbellと、多くの映画音楽を担当したGraeme Revellが参加と豪華な布陣。(Graemeが#4、Davidはそれ以外のナンバーを担当。特に#4についてはGraemeがすべて任せられたよう。)また、#3、#5、#7、#11には合唱団も参加。シンフォニックな要素をふんだんに取り込み、このバンドのゴシックな雰囲気づくりに欠かせない存在です。
歌詞はジャケットの青白さのイメージを象徴するような悲愴的な印象のものが多数。空想的で抽象的な表現が多く、この辺もゴシックな雰囲気にかなりマッチしています。
#5などではブレイクダウンも見られたり#11のイントロはメタリックリフだったりとヘヴィなナンバーもあり、時にしとやか、時にヘヴィ、時に叙情的。積極的にメタルバンドへ分類されることは少ないバンドではありますが、シンフォニックメタルやゴシックメタル勢に劣らない完成度を誇っているといっても過言ではないでしょう。それでいてメタルに寄り過ぎず、当時流行だったニューメタルをはじめとするオルタナティヴでモダンな雰囲気を醸し出しているのが爆発的な売り上げを記録した要因かも。
#12はボーナストラックで#4のバンドバージョン。ピアノも残しつつ少々ヘヴィに、このバンドらしいアレンジになっており、こちらがオリジナルでも十分といえるナンバーです。(#9の存在を考えるとこちらをオリジナル収録でもよかったのでは?)
2000年代前半のロックは女性ヴォーカル流行期(?)というのもあり、Amyをいかに映えさせるかということに重点を置いているな、という印象。それについては十分に成功しているといえますが、個人的には少々物足りなさも感じました。自分としてはやはり全員がバチバチ演奏しているタイプの作品がタイプだな。売れた作品であることに異論はないので、国外ロック入門作品としてはかなり適した作品と言えると思います。是非。
そういえば#2はラルクのライヴの待ち時間に流れていたtetsuyaセレクトの楽曲群の中に入っていました。ポップパンクが主体のプレイリストの中でひときわ目立っていたような気がする。しかも待機列で友人とちょうどEvanescenceの話題が出て、噂をすればとなんか謎にテンションが上がったな。ライヴ色々なくなっちゃったし寂しいなあ。スラドミとかメタルウィークエンドどうなるんだろうか。はやくイキたい・・・。
おわり