Nine Inch Nails - The Fragile
こんにちは。
今回は1年ぶり2回目の登場、
です。
今年2020年にロックの殿堂入りしたことも話題になりました。前回のレビューではセカンドアルバム「The Downward Spiral」を取り上げ、独特のサウンドを聴かせてくれました。今回はその次のアルバムとなるサード「The Fragile」。セカンドの時点でかなり重厚な世界観を披露してくれましたが、今作は二枚組とボリュームアップしており、恐怖さえ感じます。
トラックリスト
[Disc 1] <Left>
#1 Somewhat Damaged
#2 The Day The World Went Away
#3 The Frail
#4 The Wretched
#5 We're In This Together
#6 The Fragile
#7 Just Like You Imagined
#8 Even Deeper
#9 Pilgrimage
#10 No, You Don't
#11 La Mer
#12 The Great Below
[Disc 2] <Right>
#1 The Way Out Is Through
#2 Into The Void
#3 Where Is Everybody?
#4 The Mark Has Been Made
#5 Please
#6 StarFuckers Inc.
#7 Complication
#8 I'm Looking Forward to Joining You, Finally
#9 The Big Come Down
#10 Underneath It All
#11 Ripe [With Decay]
素朴なギターフレーズが左右から聴こえてくる始まり。この時点でエクスペリメンタルで独特な雰囲気を醸し出しており、生半可な気持ちで入ろうとする者に警告を与えているよう。機械的なサウンドとビート、そして苦しみを叫んでいるようなTrent Reznorのヴォーカルはいつも通り。裏切りによる苦しみが歌詞のテーマのようで、実際に苦しみを叫んでいる。基本的に曲間なく続いていくのも特徴的です。
ピアノが使用されているナンバーが多く、<Left>では#7の美しくも一瞬狂気的な演奏を見せる部分もあり魅力的。<Left>#7、#13、<Right>#11の演奏はMike Garsonというピアニストで、Trentの憧れであるDavid Bowieの作品にも参加しているよう。他にもJohn Lewisというジャズピアニストも参加しており、その中でも<Left>の#11では今作の特徴のひとつである繊細なピアノのイントロが曲を通して続く中で、どんどんインダストリアルなサウンドが流れ込みダウナーな雰囲気になっていく、今作を印象付けるナンバー。今作ではピアノの持つ美や繊細さを意識している部分が大きいかもしれません。
逆にダウナーな雰囲気は低音ストリングスで表現している部分も多く見られ、他にもシンセ・キーボードによる多彩な音色が使用されており、前作よりも色々なアプローチが見られます。そのためかプロダクションメンバーには多くの名前が連なっていますが、その中でも特に異彩を放っているのがDr. Dre。<Left>#8のみですが、ミキシングアシスタントとしてクレジットされており、こんなところで名前を見られるとは思わなんだ。
<Left>#7、#12、<Right>#3にはKing Crimsonなどで知られるAdrian Belewが参加。各曲で彼の特徴的なピッチのギターサウンドを聴くことができます。音楽性は多才ですが、2013年に一度NINの正式メンバーになるもすぐに脱退するなど、少々気の多い性格のようです。(それでも1981年からしばらくはKing Crimsonで重要な役割を担っていたよう。プログレが性に合っていたのかも。)
<Left>#1のように歌詞は苦しみがテーマになっていますが、前作がかなり内向的なモノだったのに対し、今作は対外的な叫びが多い印象。特に<Right>#6はタイトルから想像できる通りちやほやされている(特に音楽業界の)スターたちへの批判が書かれています。自身がTVTで圧力をかけられた経験も踏まえてのことでしょう。特に「Don't you?」はMarilyn Manosonを指しているといわれています。(彼は同曲のMVにも出演しており和解はしている模様。)かなり過激な表現やパフォーマンスも多く、ライヴツアーの費用をポケットマネーから出したり、自身の作品を実験的な方法で売り出したりしていることも含め、とにかく「アーティストとして自分を表現し発信する」ということに大きな拘りを持っていることが伺えます。
「静」と「動」が作品中で入り混じっているのは前作同様。ただ、前作よりはダウナーな印象は薄く、ポップとは言わないまでもピアノをはじめとした繊細な音使いや落ち着きのあるナンバーが目立ち、聴きやすいといえば聴きやすい。<Left>のほうが落ち着いた印象のナンバーが多く、<Right>のほうがインダストリアルな雰囲気のナンバーが多いかな。売上は前作と比べだいぶ落ち込んだようですが、評価が低いわけではなく完成度も非常に高い作品です。
徐々に5月も終わりに近づいてきましたが、まだちょっと寒い。寒いのに昨日パピコを独りで二本食べたら魂が抜けるかと思うくらいお腹を下しました。半分こしなかった罰か。いねぇんだよ、分ける人が。助けてくれ。
おわり
Art Of Anarchy - Art Of Anarchy
こんばんは。
今回はアメリカのロックバンド、
Art Of Anarchy
です。
2011年に結成され、メンバーにはSTPやVelvet Revolverのヴォーカルで知られる故Scott Weiland、Sons of ApolloやGN'Rのギタリストで知られる Ron "Bumblefoot" Thal、Disturbedのベーシストで知られるJohn Moyerと、所謂スーパーグループです。(現在のヴォーカリストはCreedのScott Stapp。)
聴くのはバンド名を冠するファーストアルバム「Art Of Anarchy」。STPの「Tiny Music...」を過去に取り上げましたが、実に約7か月ぶりにScott登場です。
トラックリスト
#1 Black Rain
#2 Small Batch Whiskey
#3 Time Every Time
#4 Get On Down
#5 Grand Applause
#6 Til The Dust Is Gone
#7 Death Of It
#8 Superstar
#9 Aqualung
#10 Long Ago
#11 The Drift
#12 Til The Dust Is Gone (Acoustic)
#13 Long Ago (Acoustic)
#1は雷雨をバックにクリーンギターで演奏されるトライバリティックなSE。そのまま力強いハードロックリフが突入。モダンで骨太な雰囲気を持ちつつ明るすぎない少々影のある曲調で、ポストグランジというのが一番しっくりくるな。
ギターの低~中音域が強調された歪み、ゴリゴリした強力なベース、重く細かいフレーズもガツンと蹴ってくるバスドラムがこのほんのりダークで力強い印象を与える要因でしょう。ミドルテンポでがっしりしたナンバーが中心ではありますが、どれも同様な聴こえ方なわけではなく、重さにパラメータを振っている#8や#11は非常にメタリックなで作品中随一の印象的なヘヴィナンバー。特に#11の中盤でツーバスの連打とメタリックなギターソロが披露される場面は激アツ。この辺はポストグランジというよりオルタナティヴメタルか。
#5では間奏でメインリフのユニゾンやビートで緩急つけてきて特に印象的。この曲や#9ではベースが特にゴリゴリと力強く聴こえてくるのもあり個人的に好みです。また、シングルカットの#6ではストリングスをフィーチャしつつ#1の雰囲気を匂わせるキメのナンバー。Ronのギターソロはほぼすべての曲に用意されており、ブルージーでのびのびした旋律が魅力的ですが、この曲ではその哀愁漂うイメージが非常にマッチしています。
STPでは力の抜けた印象のあるScottの歌声でしたが、こちらではけだるそうな雰囲気はそのままに、芯のある力強さも感じさせるヴォーカルです。さすが多くのバンドでのキャリアをモノにした男、バンドによって印象が微妙に違って面白い。リズムギターのJonとベーシストのJohnによるコーラスワークも印象的で、全体を通して多くの部分で彼らによるハモリやダブリングが使用されています。シングルカットの#3や#7あたりはそのコーラスワークと彼ららしいほんのりダークな曲調が魅力的なナンバー。
プロデューサーは中心人物であるRon。色々なタイプのバンドから集まったメンバーで、時にダークに、時にメタリックに、時にクールに、各曲でそれぞれ微妙に異なるアプローチをとりながら、このバンドとしてのイメージをしっかりと作り上げる作品にまとめ上げられており、彼の手腕を物語る出来上がりと言えるでしょう。
そういえばJohn & Vince Votta兄弟は一体どこから来たのだろうか?このバンド以外のキャリアが不明なのだが、Ronが連れてきたのだろうし、何よりスーパーメンバーに囲まれながら完全にこの作品に馴染んでおりタダ者ではないことだけは伺えます。
メンバーがメンバーだけありますが、彼らが集まったことにより想像以上の化学反応を起こし、キャリアだけでは語れない完成度を実現した納得の作品。ハードロック系統の間違いない作品を聴きたい方なら満足できるはずです。是非。
最近は夜風が涼しいにもかかわらず、朝起きると寝汗でベトベトになっているんですが、なぜですか。コメントでもいいので教えてください。
おわり
Angra - Freedom Call
こんばんは。
今回は一週間ぶり二回目、
です。
前回はセカンドアルバム「Holy Land」でオリジナリティ満載のブラジリアンパワーメタルを聴かせてくれましたが、今回は、その後にVanden Plusとのスプリットを挟んで発表した二作目となるEP「Freedom Call」。「Holy Land」からメンバーの変更はなし。6曲で30分と、EPですが十分なボリュームです。
トラックリスト
#1 Freedom Call
#2 Queen Of The Night (Remixed Version)
#3 Reaching Horizons
#4 Stand Away (Orchestra Version)
#5 Painkiller
#6 Deep Blue (Edit Version)
前作と比較すると力強くヘヴィさの増したバッキングが印象的です。ベースのゴツさも相変わらず。前作までの音楽性にヘヴィさが不足している点をリスナーに指摘されていたらしく、その影響と思われます。聴きなれないパーカッションもあり、彼らの民俗的な要素も健在。ただ今作唯一のオリジナルナンバーの#1では逆にキーボードの壮大さが影を潜めてしまった感があり、そこは少々残念だ。
#2以降は過去作の別バージョン等なので、今作は企画盤的な要素が強い。#2、#3は最初期のデモ音源「Reaching Horizons」(#2は「Holy Land」の日本盤にてボーナスで収録)、#4はデビューアルバム「Angels Cry」から、#6は前作「Holy Land」から。
基本的に#1に聴かれるヘヴィさを纏ってのリミックスとなっており、Andreの高音も合わせて迫力は2倍増し。#3はバラードにも関わらずそれがいかんなく発揮されています。#4のアレンジはAngraにアレンジ面等々で何かと深い関わりのある、AvantasiaのSascha Paeth。Andreとともにプログラミングや演奏を行っていると思われますが、生演奏に負けずとも劣らない壮大なアレンジには目を見張るものがあるし、何よりそれに負けないAndreのパワーのある歌声もさすがです。
#5はヘヴィ・メタルを代表する名曲のカヴァー。メタル・ゴッドことRob Halfordの高音を生で観たときはたまげたもんですが、Andreにしてもコレを歌いこなせるんだからさすが。惜しい人を亡くしたなあ…。この曲ではAngra感は抑え目で、オリジナル音源に比較的忠実な、純粋なヘヴィメタルが演奏されており、ミキシングもゴリゴリ。ヴォーカルにもこれまでにはない、Robを思わせるリバーブが目立ち歌い方も寄せているな。そして一番の見せどころはやはりKikoのギターソロ。原曲に一歩も引けを取らないテクニカルで熱い一分半はKikoファンなら熱狂間違いなしでしょう。
ただのカヴァーアルバムにしたくなかったのかよくわかりませんが、唯一のオリジナルナンバーでタイトル曲にも関わらず#1が足を引っ張っていた感が否めないことを除けば、Angraの良さ、というよりAndreの良さが十分に楽しめる作品でした。
このCD、私の収集癖の初期症状が現れた頃にハードオフで購入したモノのひとつで、こういう形で鑑賞して記録に残せるのがなんだか感慨深い。今日も何枚か購入しました。ハードオフ万歳。ありがとうハードオフ。
おわり