Epica - The Phantom Agony
こんばんは。
今回は初のオランダ勢、
Epica
です。
After Foreverを脱退したMark Jansenを中心に結成、Simone Simonsという当時は無名だった女性ヴォーカルを迎え(というかMarkのガールフレンドだったらしい)、オランダ屈指の実績を誇るシンフォニックメタルバンドです。2017年には初来日に加え、「進撃の巨人」のカヴァーアルバムを発表するなど、日本にゆかりのあるバンドでもありますね。聴くのはデビューアルバム「The Phantom Agony」。シンフォニック/ゴシック系統バンドは初かな?
トラックリスト
#1 Adyta "The Neverending Embrace"
#2 Sensorium
#3 Cry For The Moon "The Embrace That Smothers - Part IV"
#4 Feint
#5 Illusive Consensus
#6 Facade Of Reality "The Embrace That Smothers - Part V"
#7 Run For A Fall
#8 Seif At Din "The Embrace That Smothers - Part VI"
#9 The Phantom Agony
#10 Triumph Of Defeat
ファンタジックな映画の冒頭を想起させる、総勢14名の管弦楽団と合唱団を迎えた、かなり本格的なイントロの#1。デビューアルバムでここまでがっつりオケを揃えているあたり、かなり入念な準備がなされていたのでしょう。#1で登場した管弦楽団・合唱団は作品を通して曲の核となるシンフォニックサウンドを彩ります。コレがシンフォニックメタル。
そのまま流れるようにヘヴィなギターリフを迎える#2。やはり注目すべきは、少々ゴシックな雰囲気を感じさせるSimoneのヴォーカル。なにせNightwishの名盤「Oceanborn」に衝撃を受け、After Foreverの大ファンということで、その影響を多分に感じさせる、パワーで押しだすのではないすっと溶け込むように優しく歌い上げるタイプ。曲調はゆったりめかつ、アタックの強い演奏が目立つバッキングですが、声楽で鍛えられたこのすべてを包み込むような歌は、ただのメタルに収まることない雰囲気作りに大きな役割を果たしています。#4、#5、#9あたりが特に光ってる。
プログレにも劣らない複雑で壮大な曲構成がなされており、ソングライティングにおいてどの曲にもほとんどのメンバーが関わっているのも特徴的。また、オーケストレーションやコーラスワークのスタッフ、歌詞にラテン語を使用しているためにその翻訳家をそれぞれ数名迎えるなど、とにかく作品の完成度に徹底したこだわりと演出がなされています。一曲の曲長は決して短くなく、ダウナーとまではいかないまでもゴシックで少々ダークな雰囲気でありながら、決してつまらなさを感じることなく、展開やサウンドひとつひとつに感動さえ覚えます。さすがAfter Foreverを率いた男のやることは違うな。ちなみに時折現れるグロウルを擁す咆哮もMarkによるもの。器用だなホントに。
Mark以外のメンバーはSimone同様、過去に目立った経歴があるわけではないようですが、それを一切感じさせないプレイ。そもそも前述のとおり緻密に練り上げられた楽曲を弾きこなせるのだから当然といえば当然だし、それを見つけ出すMarkの腕も大したものだ。Markの手引きもあるのでしょうが、キーボーディストのCoen JanssenはDragonForceの「Extreme Power Metal」にゲスト参加していたり、SimoneはKamelotの多くの作品にゲスト参加している。そしてちゃっかり(?)キーボーディストのOliver Palotaiと結婚し、子供も儲けている。
プロデューサー兼エンジニアには先月3度もこのブログに登場したAngraの初期作品を担当したAvantasiaでも同じみSascha Paeth、エグゼクティブプロデューサーにはAfter Foreverの前期作品を担当したHans van Vuurenという人物。Markでも十分のように感じますが、あえて起用することでより作品を洗練させようという高いプロ意識と信頼がここでも感じられます。
シンフォニックメタルというと「ヘヴィメタルとシンフォニーの融合」と表現されるのが常ですが、メタル作品というよりももはやクラシック音楽作品といってもいいスケールの作品。ギターソロがないなど、メタルサウンドを期待している人だと好き嫌いの観点でいえばオススメとまではいかず、人を選びそうな気はしますが、単純な完成度でいえばかなりのもの。ひとたび聴いてみたらハマる可能性もアリ。一聴の価値はあると思います。
先日、IKEAのサメを購入したんですが、もうめちゃめちゃにイイ。毎日抱いて寝てます。すき。
おわり