Mechanical God Creation - Artifact Of Annihilation
こんにちは。
今回はイタリアからテクニカルデスメタル、
Mechanical God Creation
です。
Arch Enemyの6作目のアルバム「Doomsday Machine」収録の楽曲名からとられたバンド名で知られるイタリア産デスメタルバンド。同国はパワーメタルが強い印象ですが、かのFleshgod Apocalypseもシンフォニックデスメタルで活躍しているので、期待は大きくてよさそう。
聴くのはセカンドアルバム「Artifact Of Annihilation」。イタリア勢は昨年末のArachnesの「Apocalypse」以来約5か月ぶり、おデスなレビューはTerrorizerの「Darker Days Ahead」以来2週間ぶりとフレッシュな(?)レビューになりそうです。
トラックリスト
#1 Pyramidion
#2 Artifact of Annihilation
#3 Illusions
#4 Cult of the Machines
#5 Shadow's Falling
#6 Lullaby for the Modern Age
#7 Terror in the Air
#8 Nomos of the Earth
#9 Woe of the Spiraled Desire
#10 Ocean of Time
#11 Obsidian Nightfall
SF映画でも始まりそうな断末魔の交錯するSEからタイトル曲。デスメタルをそれたらしめるアグレッシヴなドラミングと、エクストリームながらもメロディアスなトレモロのギターフレーズ。非常に現代的でド派手なデスメタルでニッコリしてしまうな。各パートのチャンネルががっつり分離され、ヘヴィ過ぎないのは今風のミキシングだろうか。もうちょっと集約されたサウンドが好みですが、まあコレはコレでいいか。
ヴォーカルはバンド名の元にもなっているArch Enemyにも負けずとも劣らない女性ヴォーカリストLuciana Catananti。(なぜか今作はLucy名義。彼女以外もニックネームでのクレジットです。)MAXにエクストリームなバッキングにまったく気圧されることなく、低音グロウルからシャウトまで力強い咆哮が終始炸裂します。
テクデスで特筆すべきはやはりギターですが、今作はDavideと、AleことAlessandro Maffei。残念ながら二人ともこの作品のみの参加ですが、トレモロフレーズを始めとしたテクニカルで細かいフレーズが作品を終始支配しており、これぞエクストリームメタル。同時にメロディアスさも強いので、アグレッシヴなメロデスといったほうが括りとしては正しいかな。どちらがリードというのはないらしく、ベースになるリフもド派手なバッキングもテクニカルなソロも、すべてが左右で忙しく切り替わりながら弾きまくっており、聴きごたえ抜群です。
ブラストが各所で炸裂する手数の多いドラミングも、このデスメタルを支える重要なパート。バスドラムのアタックも文句なしのバチバチでエクストリームさ満載ですが、暴虐一辺倒でなく時にタメのあるフレージングも見せてくれるのが、メロデスっぽさの演出に役立っている。
対して同じリズム隊のベースはあまり前に出てくることなく控えめ。この手のジャンルだと結構ゴリゴリ抜けてきたり、テクニカルに前面に出てきたりするものですが、上物がド派手な分、基盤としての役割に注力しているようです。ベーシストはVeonことAndrea "Veon" Marini。現在は脱退してしまっていますがオリジナルメンバーの一人で、#5とインストを除く歌詞を担当しているのも彼。中心人物として縁の下の力持ちの役目を担っていたようですね。
ほとんどの曲が3分半~4分半に収められており、ヘヴィ過ぎないミキシングやド派手でメロディアスな曲調など、ニュースクールなエクストリームメタルを象徴するような作品に仕上がっています。個人的にはもうちょいパンチの効いたモノが好みではありますが、現代的な高い完成度ではあるので、アグレッシヴなメロデス好きな方は楽しめるのではないかと思います。
昨日は車のサンシェードを買いに出かけたんですが、銀のタイプのヤツが昔より品ぞろえが悪くなったような気がします。もう銀の時代は終わったのかな。手に入ったのでいいんですが、どうも何においても時代に乗り遅れている感があるな。コロナの影響かな。
おわり
Angra - Aurora Consurgens
こんばんは。
今回は一週間ぶり3度目の登場、
です。
聴くのは前回レビューした「Freedom Call」から10年後に発表した6作目のスタジオアルバム「Aurora Consurgens」。アルバムタイトルは中世ヨーロッパの哲学者・神学者であるThomas Aquinasによる書物からとられたらしい。深層心理の研究などで知られるCarl Jungが参考にしたらしく、スピリチュアルなテーマという点でも、このバンドらしいチョイスですね。
トラックリスト
#1 The Course Of Nature
#2 The Voice Commanding You
#3 Ego Painted Grey
#4 Breaking Ties
#5 Salvation: Suicide
#6 Window To Nowhere
#7 So Near So Far
#8 Passing By
#9 Scream Your Heart Out
#10 Abandoned Fate
#11 Out Of This World
何かファンタジックな映画でも始まりそうな#1のイントロ。まさに中世のスピリチュアルな印象で掴みはバッチリ。そのままメタルサウンドに突入するわけですが、これまで以上にヘヴィな音作りになっていることに注目したい。イントロこそトライバリティックな雰囲気を醸し出していますが、ギターリフが入ってきた途端に王道パワーメタルが炸裂しており、#2、#5もそのパワーメタル全開な流れのままにKiko Loureiroの細かなピッキングが光るイントロと、ツーバスがドシドシ蹴られるスピードチューン。過去作と比較するとキーボードプレイによる荘厳で派手な雰囲気は薄れていますが、優良な王道パワーメタルを聴くことができます。
キーボードの派手さが影を潜めた分なのか、もともとテクニカルだったギターの速弾きがより強調されている。ギターソロはもちろんのこと、ヴォーカルのバックでもザクザク刻んたプレイは聴きどころ。どの曲でもバチバチですが、#9は特にド派手でエキサイティング。この作品を象徴するようなザクザクしたヘヴィさと緻密なテクニカルさを兼ね備えた注目のナンバーです。また、#4などではクリーン/アコースティックトーンでの印象的なアルペジオも登場、壮大さが売りのイメージだったこのバンドですが、これまた違った雰囲気も見せてくれます。
逆に過去作に負けずも劣らない民族的な雰囲気を持っているナンバーもあり、#7ではブズーキという琵琶に似た弦楽器が使用されています。そして演奏はやはり(?)Kiko。テクニカルな速弾きから叙情的なソロまで弾きこなすだけでなく、ヘヴィなパワーメタルからトライバリティックな演奏までカバーするとは。ちなみにオーケストレーションの約半分もKikoが担当。ジャズ/フュージョンのジャンルでも活躍している彼ですが、今作品では彼の器用さが大活躍しています。
Andre Matosは3作目「Fireworks」発表後に脱退しており、ヴォーカルはEdu Falaschiに交代。高音でパワーが炸裂していたAndreとは対照的、とまでは言いませんが、中音域をこぶしを効かせた力強さに魅力のあるタイプ。#4のような落ち着いたパートではセクシーな歌声を披露してくれ、パワーだけじゃないシンガーとしての幅広さを聴かせてくれます。
Eduと同じタイミングでベーシストとドラマーも交代しており、前者はFelipe Andreoli、後者はAquiles Priester。Felipeはオーディションで加入し、このアルバムの発表の翌年にはEduとともにAlmahを結成しています。AquilesはAngraと同じくブラジルのパワー/プログレッシヴメタルバンドHangarからスカウトされた実力者。この作品はパワーメタル色が強く、そうなると堅固なリズム隊がカギになるわけですが、その点はこの二人によって完全に支えられているといっていいでしょう。特にバスドラムの手数はセカンドアルバム「Holy Land」から倍増くらいはしているのではなかろうか。
プロデューサーにはViper~Angraの今作までエグゼクティブのAntonio D. Piraniに加え、ShamanやNoturnallのヴォーカルで知られるThiago Bianchiと、Pink Cream 69やUnisonicのオリジナルベーシストで知られるDennis Ward。(Dennisはサウンド面のエンジニアも担当。)パワーメタル色の強さが最大限に引き出された背景にはこのメンツの働きも大きいでしょう。
歌詞は内省的な場所に救いを求めるようなテーマになっているようで、冒頭に書いた書物の内容に基づいたものでしょう。Rafael Bittencourtは結構な読書家であるらしく、彼の知的な面もここで存分に発揮されています。
#11はボーナスですが、なんとRafaelがリードヴォーカルをとったナンバー。もともとヴォーカル志望だったということもあってか、なかなかにイイ歌声を披露してくれます。(かなりリバーブをかけてOKをもらったという話もありますが…)曲調はセカンドを思わせる壮大さと民族的アプローチを感じるもの。中心人物であるRafaelのワガママがボーナスという形で実現された、みたいな感じですかね。色々な意味でナイスなナンバーです。
6作目ともなれば変化や進化が求められるキャリアになってくるわけですが、これまでのバンドの雰囲気を残しつつも、それにしっかりと応えた聴きごたえのある完成度の高い作品。特にKikoが炸裂しているので、派手なギターが好みの方はかなり楽しめるはず。バンドの過去作と比較して聴くのもいいと思います。
先日からにほんブログ村に参加していますが、CDレビューカテゴリの注目記事で前回の記事「Dream Theater - Falling Into Infinity」が一位を獲得しました。やったー!
まあそんなに大規模な世界でもないんでしょうが、一位という響きはやっぱり嬉しいですね。いつもありがとうございます。コメントが来るようになったらもっと嬉しいなあ~。
今後ともよろしくお願いします。
おわり
Dream Theater - Falling Into Infinity
こんばんは。
今回はプログレッシヴ・メタルの先駆者、
です。
プログレッシヴ・ロックとヘヴィ・メタル双方の要素を取り入れたこのジャンルを世に広めることにおいて、もっとも大きい功績を持つ偉大なバンドのひとつ。日本でも特に人気の高いメタルバンドのひとつで、私が最初に手にした国外バンドのひとつでもあります。
聴くのは4作目のスタジオアルバム「Falling Into Infinity」。昨日、Yesの「Fragile」をやったばかりで、連続でかなり濃い内容を聴くことになっています。大変。
トラックリスト
#1 New Millennium
#2 You Not Me
#3 Peruvian Skies
#4 Hollow Years
#5 Burning My Soul
#6 Hell's Kitchen
#7 Lines In The Sand
#8 Take Away My Pain
#9 Just Let Me Breahte
#10 Anna Lee
#11 Trial Of Tears
#1はギター、キーボード、ベースで7拍子のリフを演奏するイントロ、8分を超えるナンバーと初っ端からその本領を発揮。彼らの特徴のひとつである、メタリックな重さ、プログレッシヴでテクニカルな間奏、James LaBrieの時に伸びやか、時に力強いヴォーカルも健在。また、ベーシストのJohn Myungはこの曲で12弦チャップマン・スティックを使用。変態さが群を抜いています。
サードアルバム「Awake」を最後にオリジナルキーボーディストだったKevin Mooreは脱退しており、後任は今作発表前にリリースしたEP「A Change of Seasons」から参加のDerek Sherinian。このジャンルにおいてキーボードは楽曲構成における役割の大きさが割合として多いわけですが、さすがAlice CooperやYngwie Malmsteenのバッキングに参加しているツワモノ。飾りに留まることがないのはもちろんのこと、それでいてメインの旋律を奏でるパートの邪魔をすることなく、特にギターソロやヴォーカルの裏で演奏される、美しく伴奏を盛り上げるピアノが印象的でこの作品で多数聴くことができます。もちろん自身のソロではしっかりとテクニックを披露してくれるので注目。
10分超えのナンバーがふたつ、それ以外も長めの楽曲がほとんどを占めていますが、曲調は基本的にポップでヘヴィさも少々薄めで、コレはレーベルからの圧力があったよう。John Petrucciはそれを受け入れたのに対しMike Portnoyはそれに反対、更にKevin脱退による作詞の負担増加、身内の不幸など、とにかく多くの出来事や事情が絡み合い、メンバーにとってはストレスの多い制作となったよう。商業的にも芳しくなく評論家からは賛否両論があったものの、Johnはこの作品の出来には好意的な姿勢を示しています。
ポップなナンバーとしては#4、#10にその傾向が顕著に表れており、アコースティックギター、ピアノがバッキングを美しく彩るバラードナンバー。逆に流れるように演奏される#5~#7は過去作に象徴されるようなプログレッシヴでテクニカルかつ作品中きってのヘヴィなナンバー。(ちなみにもともと#6は#5の一部でコレもレーベルとの絡みで分けられたっぽい。)特に#7はいつの間にか叙情的でジャジーな雰囲気に移行しており、このドラマティックな抑揚ある展開はさすが、Dream Theater。バッキングではMikeが緻密なハットを刻んでいたり、Derekの美しいピアノ伴奏が奏でられているのもこのバンドの強みが見られるのもポイント。また、コーラス部分にはJohnのリクエストでKing's XのDoug Pinnickがゲストヴォーカルで参加しており、パートはそう多くはないにもかかわらず、James以上に力強い歌声で、リスナーに印象を強く残します。
最もテクニカルが光るのは#9。5分半というこのバンドとしては長くない尺の中で各パートの技術がソロの中でがっつり演奏されるだけでなく、比較的ヴォーカルを邪魔しない演奏の多いDerekも含め、Jamesの裏でもバチバチ。聴きごたえ抜群です。
歌詞は抽象的ですが、前述のとおり制作過程におけるさまざまな出来事についての感情の起伏が描かれています。(悪いことばかりではなく、Jamesには娘の誕生というハッピーな出来事もありました。)比較的わかりやすい部分もあり、コレもレーベルの意向の絡みがあったのかもしれません。
ラスト#11は3つの組曲で構成されたナンバー。長尺であり、構成そのものや1分半に及ぶギターソロなどプログレ要素が強いにも関わらず、ドラマティックかつ複雑すぎない展開で、聴くにはやさしいという不思議な楽曲でこの作品は幕を閉じます。
バンドとしては不本意な部分があるとはいえ、ポップナンバーとプログレナンバーが作品中でバランスよく混在する、ある種オルタナティヴなアプローチともとれる作品になっています。ポップナンバー単体で聴くと確かに物足りなさは感じますが、それ以上にプログレナンバーで彼ららしさが発揮され、バラエティに富んでいるので、ある意味入門アルバムとしていいかもしれません。
そういえばコロナの影響でDream Theaterの来日も延期になっちゃってましたね。ワンマンなのにチケットがフェス並じゃんなどと思っていました。つまりLOUD PARKに来てくれればすべて解決なので、よろしくお願いします。
おわり